さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



動揺を隠しきれない私を、京は窓枠に寄りかかったまま静かに見ていた。そしてふっと視線を逸らすと、ボソ、と呟く。


「いいな。俺も見たかった」

「……いや、どうせ見るでしょ。日本で」

「へー。見せてくれんの」

「……っ」


墓穴を掘った気がする。そんなことを言われたら、日本で同室に戻ったとき、変に意識してしまうじゃないか。


結局言葉を詰まらせ、逃げるように俯く私。

京はすぐに少しだけ顔を近づけてきて、薄く微笑んだまま低い声で囁いた。


「かわいいね、千歳」

「……そういうこと言わないで」

「言うだけでもダメなの?」

「……」


そういう言い方をされると、こっちが悪いみたいになって、断れなくなる。

じっ、と抗議するように見上げても、いつもの余裕のある微笑で返されて、まったく手応えはない。


目は逸らせなかった。変に逸らしたら、こっちが照れているみたいになって、さっきみたいに揶揄われると思って。


生ぬるい夜風が、京の細い髪を微かに揺らす。

辺りには、まださっきの煙草の甘ったるい香りが残っていた。


指一本触れられてないはずなのに、京の空気感に当てられて、その場から動けない。


この雰囲気、もしかしてこのまま部屋に呼ばれたりするのかな……

なんて、そんなことすら考えて身構えてしまっていた、そのときだった。