「……っ!ゲホッ、ゲホッ……!」
突然煙に巻かれてむせ返る。
涙目になって咳き込む私を、京は感情の読めない目でじっと見つめるだけ。
「っな、何すんの……」
「あはは、ごめん」
悪びれない声音で謝りながら、軽く笑う京。そのままちょっと肩をすくめる。
「知らない男の匂いしたんで」
ぎくり。
心当たりのありすぎる指摘に、思わず表情が固まってしまった。
どう考えても、ジャックスの香水のことだろう。バイクに乗っている間ずっとしがみついていたから、あの甘ったるい匂いが移ってしまったのだろう。
…………いや、でも、別に特段やましいことをしたわけでもないのだ。
そう考えると、こちらに言い訳の機会も与えず、出会い頭に強制的に受動喫煙させてくる方がどうかと思う。
咎めるようにじっと睨み上げると、京は目を細め、指先の煙草を軽く揺らしてみせた。
「嫌い?」
「いや、嫌いとかそういう問題じゃ……未成年喫煙とか普通にダメだし」
「きびしー」
「いや、そもそも……」
健康に悪いのに、なんで吸ってるの?
と、そんな問いが喉元まで上がってきたところで。
じっ、とこちらを見下ろす京の空気感にあてられ、それを口にするのを躊躇ってしまった。
自分でも分からない、けど、なんというか……
やっぱり私はまだ、京のことにあんまり深く踏み込む資格がないように感じてしまったのだ。
