さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「…………」

「…………」


お互いに、一瞬目を見開いて硬直する。

京はシャワーを浴びた後なのだろう──暑いからか長めの髪を後ろでゆるくハーフアップにまとめていて、鬱陶しそうな前髪の隙間から覗く顔立ちがやけに艶っぽい。


着ているのはゆるい黒のタンクトップ一枚で、完全なるダル着状態。

そんな中で、首元の高級そうな銀色のネックレスだけが、やけに冷たく光っていた。


ろ、露出ぅ……!!


LAのチャラ男二人組からやっとの思いで解放されたと思ったら、今度はこれか。

明らかにドギマギし始める私を前に、京は煙草を指に挟んで、軽く首を傾げた。

湿った前髪の向こうの瞳が、気だるげに細まる。


「おかえり」


言いながら、こちらを呼び寄せるみたいに軽く指を曲げる京。


立ち止まってしまった以上無視するわけにもいかず、私は渋々彼が身を乗り出している窓枠のそばに歩み寄った。

窓枠に肘をついて私を見下ろしながら、京はいつものゆるいトーンで話しかけてくる。


「なに、遅かったじゃん随分」

「……ちょっと色々やることがあって」

「ふうん」


京は興味もなさげに返すと、再び煙草を口元に運ぶ。


赤く光った先端が、夜の中で一瞬だけ強く光って──


次の瞬間。


ふう、と吐き出された白い煙が、まっすぐ私の顔にかかった。