さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



結局、撮影が終わり、再び彼らのバイクに乗せられて寮へ帰ってきた頃には、時刻はすでに22時を回っていた。


……遅すぎる。


何が『一本撮ったら帰してあげる』だ。なんだかんだ、しっかり五本くらい撮らされたじゃんか。

もう二度とあの人たちの言うことは信用しないようにしよ……


と、そんなことを思いながら、私はぽつぽつ光る街灯の中、トボトボと寮の敷地内を歩いていた。

脚は重いし、気疲れもするし、バイクに乗せられたせいで髪はぐしゃぐしゃだし、もう散々だ。


けれど一つ幸いなのが、今日は部屋に椎木篤彦がいないということ。

すなわち、気を遣わずにシャワーを浴びて、心ゆくまでひとり時間を満喫して、そのまま幸せな眠りにつけるということだ。


一刻も早く部屋に向かわなければ!

と、そう決意しながら、寮の入り口に続く赤土の道を歩いていた、そのとき──


「あ」


ふと、足が止まった。


何故か。

明かりのついた部屋の窓たち、そのうちの一つが大きく開け放たれていて。


その窓辺に、ひとり、煙草を咥えた京が見えたからだ。


「……え、」


ちょうど、煙を吐き出したところだったらしい。


夜風に紫煙が細く溶けていく向こうで──

京がちら、とこちらを見る。


目が合った。