そして数分後──
私はヘルメットも装着しないまま、爆走するバイクの上でジャックスの背中に必死にしがみついていた。
なんなんだよ、この状況はっ……!!
風圧が凄まじくて、まともに目も開けられない。凄まじい勢いで流れていく街並み、カーブするたびに傾く車体、嫌な浮遊感。
運転が荒すぎて一歩間違えれば生命の危機だ。お願いだから事故らないでよ……!!
この状況じゃもちろん、掴む場所なんてジャックスの腰しかない。
思わずギュッと抱きつくような形で顔を埋めれば、やけに大人びた香水の匂いが鼻腔をついて落ち着かなくて。
離れたい……けど離れたら放り出されて死ぬ……。
と、そんな私の葛藤を察したのか、はたまた私に抱きつかれているこの状況が楽しいだけなのか、ジャックスはハッと愉快げに喉を鳴らした。
「Relax. My driving is perfect.(安心しろって。俺の運転は完璧だ)」
「Except for the license.(免許以外はな)」
「?!」
横からとんでもない補足を入れてきたローガンに、私はピシリと凍りつく。
まさかの無免ライダー?!
さらにはノーヘルって、万が一捕まったら普通に高額罰金なのでは……。
不安に思った私は、警察の有無を確認しようと慌てて周囲を見渡してみる。
けれど、マドゥレイラの中でもこの区画は治安が悪いのか、警察らしき姿は見えず、代わりにカタギじゃなさそうなイカついノーヘル爆走お兄さんたちとばかりすれ違って、無法地帯……?と呆れてしまった。
……いや待てよ。
そういえば、ギャングの支配地域では顔を隠さないことが『敵対組織の人間ではない』ってことを示す暗黙のルールになっている、なんて聞いたことがあるけど。
もしかして、そういうこと?今の私、とんでもなく恐ろしいところを通ってる……?
ちょ、本当に勘弁して……!!
