さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「ROGAN!!」

「JAX!!」

「Photo! Photo with me! Please!!(写真お願い!!)」

「Japanese guy, too!(日本人の子も!!)」


うわ、ちょ、ちょっと待ってやばいやばいやばい!!


南米特有の圧倒的な熱量のファンたち、一歩間違えたら圧死しかねない状況。

一体どう対応するのが正解なのか分からず、私の表情は完全に引き攣っていた。


と、そんな私の横で。


「Woo! Now we’re talking!(おーおー、盛り上がってきた!)」

「Sorry! We don’t have time right now! Maybe next time!(悪い!今ちょっと時間ないんだ!また今度な!)」


楽しそうに手を叩いて笑うジャックス、紳士的に爽やかな謝罪を振り撒くローガン。どうやら二人はこういう状況にはもう慣れっこらしい。

彼らは笑顔でファンをいなしながら、一瞬だけ、何かを示し合わせるみたいにチラッと目を見合わせた。


そして、次の瞬間。

同時にバッと踵を返すと──

全速力で駆け出した。


──私を引きずって。


「?!?!?」

「Come on, this way!(こっち行こうぜ!!)」


気づいたらジャックスに強引に腕を引っ張られていて、私は目を白黒させながら走った。

えっ、いやいやいや待って待って、困るんだけど。一体どこに連れてくつもり?!

死ぬほど焦るけれど、一日の疲労が蓄積したこの足じゃ、ろくに抵抗もできない。


ちょ、誰か……!

思わず助けを求めて振り返ったら、追いかけてくるファンの集団の姿が視界に入った。


……あ、無理だ。

戻ったら戻ったで押し寄せるファンの波にすり潰されて死ぬ。


つまり──詰み。


と、早々に悟ってしまった私は。

一日の疲労で鉛のように重くなった脚を無理やり動かし、無我夢中で二人についていくしかないのだった。