「Then can I steal you instead?(じゃあ、フライヤーの代わりに君を攫ってもいい?)」
「…………」
長い睫毛。悪戯っぽく輝くスティールブルーの瞳に、夕日に透ける明るい茶髪。
私は目を見開いた。
だって、その姿は、紛れもなく──
ジャックス・カーター。
「ぶっ……ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ!!」
飲んでいた水で思いっきりむせ、身体を折り曲げて咳き込む私。
それを愉快げに見下ろしながら、ジャックスは身体を仰け反らせて爆笑する。
は?
な、なんでブラジルのストリートにあなたが……。
「Easy. Different vibe, same way of turning hate into a concept. Pretty as ever.(落ち着けって。雰囲気は変わったけど、悪意をコンセプトに変えるところは相変わらずだな。ほんと、相変わらず綺麗だよ)」
出会い頭、当然のように口説いてくるジャックス。私はその言葉に反応する余裕もなく、冷や汗ダラッダラになっていた。
だって、この人がいるということは、きっともう片方は。
私は涙目になりながらも、恐る恐るジャックスの背後に視線を移す。
するとそこには──
背の高いジャックスよりもさらにデカい、威圧感抜群のサングラス男が一人。
彼はサングラス越しに私と目が合った瞬間、不敵に片方の口角だけを持ち上げた。
「Yo. Still skinny as hell, shorty.(よお。相変わらず細っこいな、チビ)」
言いながら、サングラスを外してキザったらしく髪をかき上げるのは──
ああ、間違いない。
「Rogan Hughes……」
思わず唇から、絶望的な声が溢れた。
