「I gotta ask you one thing!(一つ聞いておきたいことがある!!)」
背後から再び鋭く飛んできた英語に、私はちょっと肩をすくませた。
……まだ何か。
「What?(なんですか?)」
渋々聞き返すと、男はずるずると引きずられている格好のまま、必死に身を乗り出して叫んでくる。
「Is your name Yoriko?(お前の名前、もしかしてヨリコか?)」
「…………」
なんて?
ヨリコ?
「Yoriko!!!!!(ヨリコ!!)」
わけが分からず戸惑う私を置き去りにして、必死に名前を呼んでくるおじさん。
周りのD-PARTYメンバーたちはその意味を分かっているのか、何やらドッと爆笑し始めた。
「Ih, lá vem ele com essa de novo!」
「Cai na real, cara!」
「HAHAHAHAHA!!」
距離がある+早口だったので、周囲がどんなふうに茶化しているのかはいまいち聞き取れない。
な、なんだ……?現地の人にしか分からない攻撃的なスラング?
その後もおじさんは最後まで私に何かを叫んでいたけれど、結局何を言いたかったのかは分からないまま──
その姿は、人混みの向こうに消えていった。
…………
…………なんだったんだ。
私はぽかんとしたまま、しばらくその方向を見つめた。
よく分からないけど、本当に、なんというか、嵐みたいな人だったな……。
判然としない感覚を抱きながらも、私はとりあえず汗の滲む鬱陶しい前髪をかき上げて。
そのまま、地面に置いておいたペットボトルを拾い上げてカラカラの喉に流し込んだ。
