瞬間、一斉に爆発する高架下のギャラリー。
「OHHHHHHHHH!!!」
口笛、拍手、地面を踏み鳴らす音。
熱狂の中、誰かが興奮した声で何かを叫んでくるけれど、今の私にそのポルトガル語を聞き取る余裕はなかった。
だって、疲れたから。
そもそもダンスバトルというものをやったのが久しぶりなのに、舞台は異国、ギャラリーはマジで知らない現地住民たち、さらに相手は天下のD-PARTYメンバー。
自分のターンが終わった瞬間、精神疲労と身体疲労が同時にドッと押し寄せてくるのは当然だった。
息切れしながら汗に濡れた前髪をかき上げ、一歩下がる。
そのまま何気なく周囲を見渡してみて──私はちょっと、息を呑んだ。
というのも。
地面に置かれたフライヤーが、既に一枚残らず無くなっていたから。
「……っはー……」
思わずその場にへたり込んで、深い安堵の息を漏らした。
良かった……
プロダンサーに喧嘩を売られダンスバトルに巻き込まれ、危うく公衆の面前で男装バレの危機に陥ったものの、最終的にはなんとか百枚完売。
……まあ、結果オーライってことにしとこう。
と、そんなことを思いながら、ちら、と横目で例の酔っ払いおじさんの様子を窺ってみると。
「Mais uma! Mais uma vez!(まだやる!もう一回だ!!)」
D-PARTYの仲間たちに両脇を掴まれながら、何やら往生際の悪いことを叫んで暴れているみたいだった。
……いや。
勘弁してよ、もう一回とか。
「Tá bom, cara. Você já deu.(はいはい。お前もう無理だって)」
「Eu ainda consigo!(まだやれる!)」
「Já viu coisa boa demais hoje. Para de atormentar o garoto.(今日はもういいもん見せてもらっただろ。これ以上あの子いじめんなって)」
「Mais uma! Só mais uma!(もう一回!あと一回だけだ!!)」
周囲の若者たちに宥められ、そのままずるずる、と情けなく引きずられていくおじさん。
やれやれと思いながらも、遠ざかっていくその姿に胸を撫で下ろしかけた──
そのとき。
