そんな考えが一瞬脳裏をよぎって、いやいや、と慌てて否定する。
なんの脈絡もなく女性的な魅せ方全開で踊り始めるのはおかしいし、色々勘繰られるに決まってる。
ただ、今の流れならきっと割と自然。
散々女みたいだとバカにされた挙句、相手が典型的なマッチョアピールでマウントを取ってきた、となると──
相手の武器を無効化する土俵に引き摺り込むのは、むしろ効果的。
女みたい?男としての魅力がない?
──それの何が悪いのか、言ってみろよ。
そんなアンサーとしての、敢えてのジャンル変更。
……きっと大丈夫だよね、ダンスバトルって、そういうものだし。
相手が投げてきた挑発を、どういなして、どう煽り返すかの、ダンスを使った会話みたいなもの。
ただ、一つだけ嫌なことがあるとすれば、椎木篤彦に私の本領がどこにあるか見抜かれていたことだけど……
まあ結果的に助けてもらったわけだし、何も言えないな。
そんなことを考えながら、私は頭の中で音を拾って、コレオを組み立てる。
低くしゃがみ込んだまま、親指でゆっくり唇を拭う。 誘うように視線を絡めた次の瞬間には、ふっと身を翻して。
髪をかき上げる動きにウェーブを重ね、その勢いのまま滑らかに立ち上がる。
そのまま、硬直した彼との距離をじわりと詰めた。
目が合う。
私は少しだけ笑って、彼の顔を指差すと──
すぐに興味を失ったみたいに、髪をぐしゃりと掻き乱した。
最後のカウント。 指先ごと、彼を外へ放り捨てる。
『Don’t care』
弾けた歌詞にぴたりと重ね、コーラスを締めた。
