さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



弾けるボーカル。

そのしなやかな音色に身体を重ねるように、ガッ、と思い切りウェーブを入れた。


「……!!」


息を呑み、目を見開く男。

きっと、私の意図が分かったのだろう。


乱れた前髪、その隙間から挑発的に見上げたまま、私は悪戯っぽい表情を作ると。

開いた手を引き寄せ、くるりと時計回りに滑らせる。頬杖をつくように顔元に添え、肩で細かな拍を遊ばせて、重心を反対側へ。

返した手首で音をさらって、流れのまま人差し指を唇に添えた。


視線だけは、ずっと彼から逸らさないまま。


ふっ、と目を細めるのと同時に、腰でひとつ、見せつけるみたいにアクセント。


表情を引き攣らせたままの彼。

その眼前に一歩踏み込むと、ふわりと揺れる前髪を軽やかにかき上げ──

至近距離で、バチッとウインクしてみせた。


「OHHHHHHH!!!!!!」


さっきとは明らかに質の違う、熱に浮かされたような大歓声が地面を鳴らす。

四方八方から飛び交うポルトガル語。断片的にしか意味を拾えない私の耳にも、そのテンションは充分伝わってくる。


「Tá sensual pra caralho…!(色気やっば……!)」

「Caraca, é a mesma música?! (おい、これさっきと同じ曲かよ!?)」

「Parece até outra música…! (まるで別の曲聴いてるみたいだ!)」

「Claro. Agora ele tá dançando girl style.(そりゃそうだろ。だって今こいつが踊ってるのって──ガールズだ)」