「If you win, I’ll make everyone in my crew take one(もしお前が勝ったら、クルーのメンバー全員にそのフライヤーを受け取らせてやるよ)」
私はその言葉を受け、思わずちらりと彼の背後のクルーメンバーに視線をやった。
今いるだけでも、十人くらい。
ここにいないメンバーも合わせたら結構デカいかもしれない。一発でごっそり持っていってもらって、クリアできる可能性もあるのでは?
と、一瞬だけ心が揺れた、次の瞬間。
「But if I win, you take it off(ただ、俺が勝ったら脱げよ)」
大爆弾を落とされ、さすがに硬直した。
何を言っているんだこの人は。
「いや、ちょ、待っ……」
焦りすぎて日本語が出てしまいながら、なんとか止めようとするけれど。
そんな私の声は、一瞬にしてかき消された。
というのも、この酔っ払い男の『バトル』という言葉に反応した周囲のギャラリーたちが、「OHHHHH!」と勝手に盛り上がり始めてしまったからだ。
「Vai ter batalha, porra!(バトルだってよ!)」
「Vai pra cima!Amassa ele!(いけ!ぶっ潰せ!)」
もはや誰がどっちを応援しているとかはなく、事情は知らないけどとりあえず煽っとけみたいな盛り上がりよう。
…………
そっかそっか。
ブラジルのストリートのノリってこんな感じなんだ……。
便乗しやすいからって他の人たちと同じ場所でパフォーマンスし始めたのが、まさかこんな変なイベントに繋がってしまうなんて。
絶好調すぎる不運体質に頭を抱えている間にも、クルーのメンバーが勝手にビートをかけ始めて、ギャラリーが大きな手拍子を刻み始める。
酔っ払いおじさんはフラフラしながらニヤつき、両手を大きく広げた。
