周囲のギャラリーも不穏な空気を感じ取ったのか、ざわざわとどよめき始めた。
……そりゃそうだよね、びっくり展開すぎるもん。こんなこと有り得る?
もしかしてこれ、番組を盛り上げるためのスタッフ陣の仕込みだったりするのかな?
そんな一縷の望みをかけて、私は遠巻きに撮影しているカメラマンさんに視線を向けてみるけれど。
彼は、引き攣った表情でふるふると首を振るだけだった。ってことは、ガチのハプニングだ。終わりだ。
私は焦り始めた。
というのも、パフォーマンスには一応二時間の制限時間があって、こんなところでタイムをロスするわけには絶対にいかないから。
しかし、そんな私の内心などつゆ知らず、目の前の酔っ払いおじは依然として絡み続けてくる。
「Hey, girl. Which dance crew are you from?(おい女。お前どこのダンスクルー出身だ?)」
「…I’m not in any crew. And I’m not a girl.(……どこのクルーにも所属してません。あと、女じゃないです)」
声を低くして警戒心MAXでそう答えた瞬間、目の前のおじさんは一瞬呆気に取られたような顔をして。
上から下まで、舐め回すように私を見たあと──
ニッ、と下品に口角をつり上げた。
