さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「Ei, garota! Por que tá roubando o nosso público?!」


突然、音楽に割り込むように飛んできた大声に、私はビクッと動きを止めた。


……え?


恐る恐る振り返ってみると、そこに立っていたのは──

おそらく、さっきまで少し離れた場所で踊っていた地元ダンスクルーの一員だった。


年齢は、四十代後半くらいだろうか。

日に焼けた赤黒い肌に無精髭。


タンクトップからゴリッゴリにタトゥーの入った筋肉質な腕を覗かせた、いかにもガラの悪そうなおじさんだ。

捲し立てられるポルトガル語が理解できず、私は困惑しながら聞き返す。


「Uh……Sorry?」


すると男は察したのか、面倒そうに鼻を鳴らし、片言の英語に切り替えた。


「I said……why are you stealing our crowd?(俺たちの客をなんで奪ってるって言ったんだ!)」


……

……はい?


客を奪ってるって……別に、客は誰のものではないのでは?

それとも何?私の知らない縄張り文化とか暗黙のルール的なものがあるのかな?


困惑する私をよそに、目の前の彼は続ける。


「Your hip-hop is terrible(お前のヒップホップはひでぇ)」


そのまま凄まじい圧迫感と共にズカズカ距離を詰めてきて、思わず一歩後ずさった。


「What the hell are you showing them, huh?(一体何見せてきてんだ、あぁ?)」


嘲るように口元を歪めて笑うおじさん。

喋るたびに、ツンと鼻をつく強烈なアルコールの匂いが漂ってきて、私は思わず顔を顰めた。


この人、絶対酔っ払ってる……。