さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



そのまま、両足を踏み替えながら浮いた足で音を取り、次の拍で足をクロス。

ぐっ、と深く沈み込んでから、反動でクラブステップへ移行。

音が止まるタイミングでは頭に片手を乗せ、ピタッと静止して溜めてから、ほどく。


──ハマった。


「Oh!」


観客の何人かが歓声を上げ、パチパチと手を叩く。その中の一人と目が合ったので、私はニッと悪戯っぽく微笑み返した。


踊りながら、ふと、昨日の椎木篤彦とのレッスンが脳裏をよぎる。

あの人はやっぱり上手い。今の私じゃ到底足元にも及ばないくらい、段違いの経験値とスキル。


私みたいにあれこれ考えなくても、反射で最適解が出せる。重い音を一番気持ちいいところで強く取るセンスと筋力。どれだけ重心を低く落としても決してブレない体幹。

けど、そういう一朝一夕じゃどうにもならない技術の差を嘆いたって、何の意味もない。


『千歳ちゃんは、ヒップホップに慣れてへんのやろな』


昨日の篤彦の、気怠げな声音が蘇る。


『自分が何やってるんか分からん顔しとる』

『ここでは何を魅せる、ってバシッと決めて、自分を演出しろ』


一つ一つの動きを、ただなぞるんじゃない。

それぞれの動きが何のためにあるのかきちんと考えて、『魅せたいもの』を選び取る。


それが──


『千歳ちゃんの得意分野やろ?』


私は、軽く息を吐いた。


そうだ。

苦手なジャンルだからって、いっぱいいっぱいになっちゃだめ。


私を一番魅力的に見せるには、どうやって音と動きを『使う』べきか。

今は、それだけのために頭を回そう。