さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



……

いややっぱ怖いな!!


昨日まではなんとかなるだろとか思ってたけど、いざこの完全なるアウェイ空間に立たされるとプレッシャーが桁違い。

見渡してみても、こちらを見ている人は誰一人としていなくて。


ここから100人集めなきゃいけないのか……。


気が遠くなりながらも、もうここまで来たらやるしかない、と一人覚悟を決める。

そして軽くため息を吐きながらその場にしゃがみこみ、カチカチとスピーカーを操作し始めた。


とりあえず、周りのダンサーたちに合わせてヒップホップ。

とは言っても、アングラのゴリゴリヒップホップではなく、アップテンポでハウスミュージックに少し近い感じの音楽を選んでみる。


バチバチのストリート系より、ステップの軽さが生きるような曲の方が私には合ってるって、椎木篤彦が言ってたから。


……こういう時に役に立つのがあの人の知識っていうのがなんか腹立つけど。


そんなふうに内心毒づきながらも、私は流れ出す音楽を背後に立ち上がった。


細かく16ビートのハットを刻むドラム。

そのリズムに軽く乗りながら、私はパーカーのフードを被った。


目を瞑って、昨日の椎木篤彦による過酷なレッスンで言われたことを思い出す。


重心は、自分の思っているより5センチ低く。

軸はぶらさず、真ん中に固定。

腕の動きはアクセントと抜きの差をはっきりつけろ。

頭の高さ、肩の向きをしっかり変えろ。平面で踊るな、立体で見せろ。


言われたことは全部、鮮明に覚えている。

あとはこれを、プレッシャーの中できちんと実行できるかどうかだ。


私はまず、最初のワンエイトを見送った。


そうして曲のノリをきちんと身体に染み込ませたあと、次の拍で──

グッ、と踏み込んだ。


行こう。