すると、それで満足したみたいに、翔は没収したエナドリを片手に持ったまま、さっさとコモンルームの奥へ歩いて行ってしまう。
バタン。
ドアが閉まる音が、静まり返ったコモンルームに小さく響いた。
残ったのは、屋根を激しく叩く雨音、そして手元の冷たいオレンジジュース。
「……えぇ、?」
今日何度目か分からない、困惑の声が漏れた。
優しいのか冷たいのか、全く分からない。DV彼氏もびっくりな飴と鞭の切り替えようだ。
しかも、わざわざ果汁100%のジュースを渡してくるあたり、ものすごく子供扱いされているみたいでなんだか複雑。
一応もう十五歳なんですけど、私……。
紙パックを持ったまま、私はしばらくそれを見つめた。
……変なの。
あの人、私の体調なんか気にしてるんだ。
翔はこちらのことになど微塵も興味がない人で、なんなら『体なんか壊しちまえ』くらいには思われてるものだと思い込んでいた。
──天鷲翔。
もう出会ってから半年近く経つはずなのに、未だに掴めない。
本当は、どういう人なんだろう。
私はまだ少しだけ緊張で暴れている心臓を落ち着かせるように、軽く息を吐くと。
気持ちを紛らわすように、冷蔵庫のそばに膝をついて、一人買い物袋の中身を整理し始めるのだった。
