さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



けれど、その数分後。


ガチャッ!


寮のドアが、内側から開いた。

驚いて弾かれたように顔を上げると、そこに立っていたのは──翔で。


え……な、なんで?

理解が追いつかず、私は数秒固まった。


忘れ物でもしたんだろうか。

そう思ったけれど、翔は特に何かを探すこともなく、ドアを押さえたままこちらを見ていて。


泣いてるとこをバッチリ見られたかもしれないと思うと、緊張で心臓がバクバクと嫌に高鳴った。

けれど、翔は私の様子に特にツッコむ素振りも見せず、代わりに呆れたように眉根を寄せる。


「いつまでそこに突っ立ってんの」

「え?」

「風邪引くよ」

「は……?」


間の抜けた声しか出せない。


……だって、私、置いていかれたんじゃなかったの?

呆れられて、見放されて、もう勝手にしろって意味でドアを閉められたのかと思ってた。


「早くして。雨入るんだけど」


完全に戸惑いながらも促されるまま中に入ると、まず翔はキッチンの冷蔵庫に向かって歩いていって。

そこから、「はい」とぶっきらぼうに何かを手渡してきた。


まだ状況が理解できないまま彼の手元を見ると、それはポルトガル語で書かれたパッケージの飲料──絵を見るに、どうやらオレンジジュースのようなものだった。


「え……」


呆然とする私をよそに、翔は涼しい顔で私の買い物袋に手を伸ばす。

そして、中に入っていたエナジードリンクの缶を迷いなく引っ張り出した。


「これは没収。代わりにこっち」

「は、なんでっ……」


思わず翔の手の中にあるジュースとエナドリを交互に見る。

翔はそんな私へ、呆れたような、見透かしたような視線を向けた。