さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



ここ最近の張り詰めた状況や、肉体的な疲労、精神的なプレッシャーなんかが相まって、耐性が低くなっていたのだろうか。

いつもならグッと堪えられるはずなのに、どうしても涙が滲んできてしまう。

一瞬声が震えてしまったのが、どうか彼にバレていませんように。


結局何も言えなくなってしまった私に、痺れを切らしたのだろう。

翔はもう一度軽くため息を吐くと、スッと私から身を引いた。


そして、何も言わずに踵を返し、そのまま──

ガチャン。


ドアの閉まる無慈悲な音が、私を遮断するように響いた。

激しい雨の音が響く中、一人その場に取り残される。


……うん。

……怒られるのも当然だ。


だって、私が今やっていることって、ただ色恋沙汰で練習に支障をきたす迷惑行為でしかない。

無駄な悪あがきをしていないで、さっさと降りることが私のやるべき唯一の仕事なんだろう。


……私だって、できることならそうしたい。

一生懸命やってる周りのみんなに、これ以上迷惑をかけたくない。


いっそ、もう最初から何もなかったことにして、ここから綺麗に消え去れたらいいのに──なんて、そんなことすら思ってしまう。

考えれば考えるほど、自分がここにいる理由が分からなくなってきて。


「……っ」


堪えきれなくなった涙が、ポロッと頬を伝ってこぼれ落ちた。


なんで泣いてるの?

私に泣く資格なんかない。

泣きたいのは翔たちの方だ。


そう頭では分かっているのに、一度緩んでしまった涙腺は、簡単には戻ってくれなくて。

俯いて、手の甲でぐしぐしと目元を拭うしかなかった。