さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



頭上から、再び静かな声が落ちてくる。


「正直言うとさ。遥風は全然大丈夫じゃないよ」


思わず弾かれたように顔を上げる。

彼の表情は、既にいつもの不機嫌そうなものに戻っていた。きゅ、と胸の奥が緊張で強張る。


「お前のせいで、同部屋のあいつが散々ピリついてて結構困ってる」


そこで言葉を切ると、翔は一歩、私との距離を詰めた。


「お前、本当にこの方法が正しいと思ってんの?」


わずかに屈んで、顔を覗き込まれる。

逃げ場を与えないような、鋭い双眸。それに真っ直ぐ射抜かれて、私はひゅっと息を呑んだ。


「そ、れは」


喉の奥が詰まって、上手く言葉が出ない。


『本当にこの方法が正しいと思ってんの?』


冷たいトーンで告げられたそれは、私がずっと恐れていた、だけどずっと心の中で回り続けていた疑問そのものだった。


最近の遥風の、辛そうな、痛々しい表情。

それを見るたびに、胸がちぎれそうになって、自分を疑ってしまうのだ。


これもやっぱり、私の独りよがりで、間違っているんじゃないだろうか。

解決するどころか、さらに関係を拗らせているだけなんじゃないか、って。


ぎゅ、と唇を噛んで何も言えなくなる私。

そんな私を前に、翔は落ちてきた前髪をかき上げ、はぁっと苛立ったようにため息を落とした。


「ここは問題児の人格更生プログラムじゃない。歌って踊ってステージに立つための場所なんだからさ」

「……すみません」


心臓の柔らかいところに直接突き刺さるみたいな言葉に、視界がじんわりと熱くなった。