「なんか、雨降りそうですね」
必殺、天気の話!!
これなら流石の天鷲翔も気分を害するまい。
そう思ってちら、と視線を向けると、彼も空をじっと見上げているところだった。
少し細められた瞳に、鈍色の雲が映る。
「もう降ってない?」
「え」
ぽつ。
翔の言葉に驚いたのと同時に、頬に冷たいものが触れた。
ぽつ、ぽつ。
次の瞬間には、鋪道のあちこちに濃い染みが増え始める。
慌てて周囲を見渡してみると、他の歩行者たちは一斉にざわつき、頭を隠して小走りになり始めていた。
「わ、何……」
私が状況を理解するよりも早く、翔がぐい、と私の腕を引いた。
「走るよ」
顔を上げると、焦ったような彼の瞳と目が合う。
「スコールだ」
ざあああああっ!!!
一瞬にして、世界が真っ白になるほどの激しい雨が叩きつけてきた。
なっ、何これ……?!やばいやばいやばい!!
日本ではなかなかお目にかかれないレベルのバケツをひっくり返したような雨の中、私は手を引かれるまま無我夢中で走るしかできなかった。
そういえば、南米ではこの季節になると前触れもなくこういう豪雨が降って、それをスコールとか言うんだっけ。
と、どこか他人事のようにそんな話を思い出しながら、私たちは命からがら寮へと辿り着くと。
びしょ濡れになりながら、入り口付近、雨を凌げる広い軒下に滑り込んだ。
相変わらず大粒の雨が地面を叩きつけ、建物の庇からは滝みたいに水が流れ落ちている。
