ブラジルのスーパーは日本ほどセルフレジは普及していなくて、ここも例によって有人レジ。
黒いベルトコンベアの上に、カゴから出した商品を並べる。
そのままレジの前まで移動し、いつも通り財布を取り出そうとした、その時だった。
「Com cartão(カードで)」
すっ、とあまりに自然な流れで翔が割り込んできた。
……えっ。
「あの、自分で買いますよ?」
慌てて彼を見上げてそう言うと、彼はこちらを一瞥もせず、さらりと言った。
「どうせ親の金でしょ」
「う……」
その通りだ。数年前から自分でバリバリ稼いでいるこの人にそんなふうに言われたら、もう何も言い返せない。
結局、口をつぐんですっかり大人しくなってしまう私。
すると目の前で商品をスキャンしていた女性店員が、白い歯を見せてニカッと笑いかけてきた。
「Seu namorado é muito bonito, hein?(あなたの彼氏、すごくハンサムね)」
早口のポルトガル語で何を言っているのかよくわからないけれど、その表情とテンションで、おそらく何かを盛大に誤解されていることだけは察しがついた。
翔が何も言わないので、私も「あはは……」と顔を引き攣らせながら曖昧に笑って流すしかない。
