さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



腑に落ちなくて、内心首を傾げる。

今日本当にどうしたんだろう、この人。朝の練習前のアクシデントといい、今といい、距離感がおかしいぞ?


どっかに隠しカメラでもあるのか……?


だとしたら下手に突っぱねるわけにもいかないので、私は黙ってお目当ての洗剤コーナーへと向かうほかなかった。

ずらりと並ぶ粉洗剤の箱たちを目の前にして、早く買い物を終わらせたい一心で、目についた一つの箱を手に取る。


けれどそのタイミングで、横からスッと長い腕が伸びてきた。


「それ、安いけど香り強いよ」

「えっ」

「こっちが無臭」


そう言って翔が手に取ったのは、その隣にあるシンプルなパッケージだった。

はい、と手渡してくる翔に、完全に面食らいながらも「あ、どうも……」と感謝を述べる。


相変わらず、やけに近い距離。なんとかポーカーフェイスを保つ私だったけれど、実はすでに冷や汗ダラダラだった。


……本当にどういう状況、これ?


スーパーで、天鷲翔と二人で並んでカートを押しながら生活感溢れる会話をしている。


なんか傍から見たら妙に所帯じみているというか、言ってしまえば、夫婦みたいな……

そこまで考えた私は、慌ててそんな考えを頭から追い払った。


何を考えてるんだ私は。疲労が限界に達して思考が完全に迷走してしまっている。


落ち着こう、落ち着こう、と自分に言い聞かせながら、私はその後もなんとか無表情を保って買い物を続けて、大体必要なものを買い終えると、ようやくレジへと向かった。