「あの、何買うんですか」
「もう買った」
「あ、そっか」
そりゃそうだ。店の中から入口方向に歩いてきてたんだから、どう考えても買い物後じゃないか。
テンパると、落ち着いていれば普通に分かることが何も分からなくなってしまいがちなの、本当にどうにかしたい。
……とはいえ、天鷲翔が買い物を終わらせたところなら、私たちは入れ違いだ。
だったら、これ以上話すこともないし、お互いに気まずい思いをすることもない。それだけが不幸中の幸いかな。
なんて、そんなふうに安心していた私だったけれど。
買い物かごとカートを取り、売り場へと向かおうと歩き出すと──
何故か、背後から足音がついてきた。
「……?」
恐る恐る、ちら、と振り返る。
いる。
天鷲翔が、スマホに視線を落としながら、普通についてきている。
…………
…………
なぜ?
特に買い物の邪魔をされるわけではないけれど、背後に天鷲翔が立っているという威圧感だけで緊張してまともに棚を見られない。
耐えかねた私が立ち止まって振り返ると、翔も顔を上げた。
「……あの」
「何」
「買い物終わったなら、先帰っていいんですよ?」
そう言うと、翔は一瞬だけ黙って。
それからすぐに、視線をふっと店の外にやって、静かに呟いた。
「ここら辺、別に治安いいわけじゃないから」
その言葉に、私はちょっと目を見開く。
えっ……と、それはつまり。
危ないから一緒に帰ってやる、っていう解釈でいいのかな。
…………
あの天鷲翔が、私に対してそんな気遣いを……?
