その日の夕方。
私は、先ほどまで篤彦に半強制的に居残りレッスンを受けさせられていたせいで、身も心もクタクタになっていた。
椎木篤彦、あの人、本当に嫌だ……。
指摘は的確なんだけど、一回ミスった途端にそこまで言わなくても良くない?ってくらい詰めてくるから本当にウザい。
これを経験したら、Mr.Dのぶっ飛び鬼畜レッスンの方が百倍マシな気がしてくる。
しかも、彼の言ってた『必勝法』とやらは、到底使えなさそうな大博打だったし……
どう考えても、私のことを面白がっているとしか思えない。少しでも有益な助言を期待した私がバカだった。
それに、結局あの後遥風は一度もスタジオに姿を現さなかったし。
私のせいなのかな、なんてずっとぐるぐる考えていたせいで、精神疲労も限界だ。
本当なら、このまま寮に直帰してシャワーを浴びてベッドにダイブしたいところ。
けれど残念ながら、今日の私にはまだ片付けたい用事が残っていた。
それは買い出し。
実は最近、日用品の調達にちょうどいいスーパーを自力で見つけたのだ。
今までみんなと一緒に使っていた寮近くのスーパーよりも10分ほど遠いけれど、全体的に安くて良い。
散歩がてら歩けばすぐだし、道中に並ぶカラフルなお店や地元の人たちの様子なんかを見ながら歩く時間も、私は結構気に入っていた。
今日は、ちょうど備え付けの洗剤が切れたのでそれを買いに行こうと思う。
こっちの洗剤は日本と違って、大きな箱に入った粉洗剤なのだ。ブラジルでは結構そっちの方が主流らしい。
あとは、ちょっとしたお菓子でも買おうかな。甘いものを持っておけば、話のネタになるし。
……遥風って甘いもの好きだっけ。
なんて、そんなことを考えながらお目当てのスーパーに到着、自動ドアをくぐったその時だった。
