それを破ったのは、遥風の重苦しいため息だった。
「はぁー……」
前髪を乱暴にかき上げ、荷物を肩に引っ掛けて立ち上がる彼。
その表情は明らかに苛立ち限界突破していて、これ以上ここにいたら誰かを殴り飛ばしかねないほどの険悪さだった。
そのまま踵を返して、スタジオ入口の方にツカツカと歩いて行く遥風。
「遥風?どこ行くの」
「部屋戻る」
陽斗の問いにぶっきらぼうにそれだけ言い残し、止める間もなく遥風はスタジオから出て行ってしまった。
ガチャンッ!!
閉まったドアの音が、やたらと重く響く。
……
大丈夫か、あいつ……。
遥風が去っていった方向を見つめながら、俺は思わず小さくため息を吐き出した。
せっかくの爽やかな朝なのに、すべてがドロドロすぎて台無しだ。
既に疲労感ゲージは満杯だと言うのに、まだ一日は始まったばかりだと言うことを思い出し、思わず絶望的になる。
早く帰りたい……。
キリキリと痛くなる胃を押さえながら、俺は千歳か栄輔か、まともに話せる常識人がスタジオに戻ってくるのをじっと待ちわびるしかなかった。
