千歳が逃げるようにスタジオを出て行ったあと、スタジオに残された俺たちの間には、なんとも言えない重苦しい空気が停滞していた。
朝の清々しい光が差し込んでいるというのに、室内の雰囲気は完全にお通夜。
どうにか明るい話題を振ろうにも、メンツが悪すぎて玉砕する未来しか見えなかった。
翔くん、篤彦くん、遥風、陽斗、そして俺。
……逃げたい。
多分ここは、千歳にくっついて俺もスタジオをあとにするべきシーンだった。なんて、今更思っても遅いけど。
「翔くんイケメーン♡」
沈黙を破ったのは、篤彦くんのふざけたトーン。
わざとらしく手を叩いて冷やかす彼に、翔くんがすぐさま「黙ってもらえます?」と氷点下の視線を向ける。
……怖ぇ。
関わりたくない……と思って目を逸らした俺は、なんとさらに怖いものを目にしてしまった。
床の上にあぐらをかいて膝に頬杖をついている遥風のオーラが、目に見えてピリピリと逆立っていたのだ。
長い前髪の下から鋭い視線を翔に向けており、怒り心頭三秒前といったご様子。
……落ち着けって……。
「なぁ。千歳に触ったらダメだって約束だろ」
その遥風から、苛立ちを押し殺したような低い声が漏れた。
俺はその威圧感に一瞬で気圧されたけど、対する翔くんはまるで気にしていない。むしろ億劫そうに肩をすくめる。
「今のは仕方なくない?目の前で転ばれて、避けるわけにもいかないでしょ」
「接触が必要以上に長ぇよ」
「お前にだけは言われたくない」
バチバチバチッ。
目の前で、巨大な火花が散っている。俺は死んだ目でそれを見ながら、気配を消していた。
怖い。美形の怒り顔は怖いというが、本当にそうだと思う。
俺は怪獣同士の戦いに巻き込まれた一般人みたいな気持ちで、流れ弾の被弾がないよう祈るしかできなかった。
