そう考えた私は、何事もなかったかのように視線を逸らし、床に置いていたバッグから財布を取り出した。
「じゃあ俺ちょっと出てくるんで」
「逃げるん?」
「朝ごはん買ってくるだけです!」
篤彦のうざい挑発を背中に受けながら、私は足早に歩き出す。
軽い朝食が必要なのは本当だったけれど、そんなことよりも私の脳内は、この後どうやって遥風に説明しようかということでいっぱいだった。
昨日返信できなかったのは、篤彦に絡まれてたからだって正直に言うべき?いや、でもそれは一歩間違えたら遥風とのLINEより篤彦を優先したみたいに捉えられかねない。
だとしたら嘘をつくべき?いや、でもその場合バレた時にさらに面倒くさくなる可能性が……
と、そんなふうに思考をぐるぐる巡らせていた私は。
完全に注意散漫になっており、スタジオ入り口の急な段差の存在をすっかり忘れていて──
ガンッ!
思いっきりつま先を引っかけてしまった。
ぐらり、体幹が傾き、視界が揺れたところで、私はようやく我に返る。
あ、ヤバい。
また私、不注意で──!!
と、今更後悔をしてももう遅くて、受け身も取れそうにない。
鈍い衝撃に備えてぎゅっ、と目を瞑った──
その瞬間だった。
グイッ!
前から伸びてきた腕に、力強く抱き留められた。
