さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「あれ?早いな」


またもやドアが開き、入り口付近から声がかかった。

その声の主は──椎木篤彦。


ちょうど探してた、とでもいうようにこちらを見てくる彼を前に、思わず表情が引き攣ってしまう。

出たっ……!!

できるだけ関わりたくなくて、私はほとんど反射的に方向転換し、何も聞こえなかったふりをして別方向に逃げようとする。

けれど、それを見透かしたように数歩先にスッと腕を出されて、進行方向を塞がれた。


「エンカウント回避やめーや。バケモンちゃうねんから」

「……」


最悪だ。

半ば睨むように顔を上げると、椎木篤彦が薄く笑ってこちらを見下ろしていた。

ゆるいセンター分けで目にかかる細い髪がさらりと朝の光に透け、いつもより緑がかって見える。


「どうしたん。喧嘩?」


遥風の背中をちらりと見やりながら、面白そうに首を傾げてくる篤彦。

人の不幸がそんなに楽しいか。

ただでさえ遥風との空気がおかしくなっているのに、ここでこの人と喋ってるとこなんて見せたら、それこそ遥風を余計に不安にさせてしまう気がする。

一刻も早く離れなければ。

と、会話を切り上げるタイミングを探してソワソワする私などお構いなしに、篤彦は勝手に喋りを続ける。

「悪いニュースあるんやけど聞きたい?聞きたいです!ほな言うけど」

「……」

「俺、明日お前のパフォーマンス見に行かれへんかも」

いや別に頼んでないですよ。

むしろ来られた方が嫌です、と喉元まで出かかったけれど、変に突っかかるのも面倒くさそうだ。

私は結局、小さく息を吐き義務的に聞き返した。