さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



昨日寝れてないのかな……?


「遥風。おはよう」


心配しながらも、私はその横顔に向かって、いつも通り声をかける。

けれど──


「……」


遥風は、こちらを一瞥もしなかった。

ふいっ、と露骨に顔を背けて、そのまま私の横を通り過ぎ、少し離れた場所に荷物を置く。


……あれ。

仲直りする前のような冷たい突き放しに、一瞬思考が止まった。


聞こえなかった……わけでは、ないよね。

何か怒ってる?


焦りで、心臓がぎゅっと痛くなる。

私は慌てて脳を急速回転させて原因を探り──すぐに思い当たった。


もしかして、昨日のLINEか。

きっとそうだ。あんな意味深なところで止まっていた会話を、よりによって今日の朝になって返してしまったのが、彼の逆鱗に触れてしまったに違いない。


……でも考えてみれば、怒るのも当然だよね。意図していなかったとはいえ、あの場面で既読無視は絶対にしちゃいけなかった。


このことは、放っておいたらさらに拗れそうな予感がする。ちゃんと昨日のは違うんだって話さないと……!

そう思った私が、彼の背中を追いかけようと一歩踏み出した、その時だった。