さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



俺はもう、千歳に気軽に話しかけられない。

だから、俺を差し置いて他の誰かが千歳に馴れ馴れしくしてたら、すぐ頭に血が上ってしまう。

腹の底がぐつぐつ煮えるみたいに熱くなって、胸の奥で息が詰まって、今すぐそいつのそばから千歳を掻っ攫いたくなってしまう。


篤彦の隣に座らないでほしい。

栄輔に優しくしないでほしい。

京に甘えないでほしい。

俺のことだけ見てほしい。


俺の千歳。

俺の千歳なのに。


最初は確かに、俺だけの千歳だったはずなのに。


気づいたら千歳の周りには男が増えてて、みんなが千歳を可愛いって言って、千歳に触ろうとしてる。

千歳はそいつらをどうするかってことに精一杯で、利口にして待っている俺のことなんか全然考えていないみたいだ。


……また変な思考になってるって、分かってる。

分かってるのに、やっぱり、どうしても止められない。


「置いてくなよ……」


暗闇に、ぽつり、と掠れた声が落ちて。

枕元に横倒しになったうさぎは、何も知らないみたいな目で、黙ってこちらを見ているだけだった。