「何を勝手に──」
「じゃ、俺はちょっと外出てきまーす」
「深夜一時ですよ?!」
私の抗議をガン無視して、篤彦はひらひらと手を振りながら、勝ち逃げしようとドアへ足を向ける。
こんな深夜にわざわざ外に出て、一体何をしようっていうんだ。
なんとかして引き留めようと私も布団から出るけれど、部屋の外に出られてしまえば、男装を解いている今の私が追いかけられるわけもなく。
「ガキは早く寝なさーい」
軽い調子でそう言い残したのを最後に、ガチャン、と無慈悲な音を立ててドアが閉まった。
静まり返った部屋に一人残された私は、しばらくその場から動けずに硬直していたけれど。
「……えぇ……」
その足音が聞こえなくなったところで、一気に脱力。
ぼす、と力なくベッドに倒れ込む。
なんだったんだ、あの人……。
ほんの数十分の絡みだったはずなのに、一年分の精神力を根こそぎ吸い取られたような疲弊感が全身を襲う。
会話のみで他人のHPをここまで削ることができるなんて、もはや一種の才能だと思う……。
もはやこれ以上頭を働かせることも億劫になってしまって、私は耳の奥に残る彼の軽い声音を追い払うように、布団を頭から深く被った。
明日になったら、椎木篤彦が居残り云々の約束をすべて忘れてますように。
そんな無謀な願いを心の中に抱えたまま、布団の中で丸まって目を閉じる。
それをほんの数分ほど続けたところで──
一日の疲労が限界を迎えていた私は、抗う間もなく深い眠りへと落ちていってしまうのだった。
