一人反省会タイムに入り悶々とする私。
そこに、篤彦がおもむろに身体を寄せてきた。
薄く笑った顔のまま、距離を詰め、顔を覗き込むようにして──
「実際どっちのがよかった?」
「ぶん殴りますよ?!」
さすがに声を荒げると、篤彦は「あっはは!」と手を叩いてゲラゲラ笑い始めてしまう。
あーもう、イライラする……!!
怒りと恥ずかしさで、急に暑くなってきた。私は暑苦しいパーカーを脱いで、うざったい前髪を乱雑にかき上げる。
「椎木さんって人にハラスメントかますしか能ないんですか?」
「椎木さんってなんやねん。椎木様やろ」
「え?貴様?」
「黙れや」
口汚く毒を吐きつつも、彼の口元は緩んでいて、明らかにいつもの数十倍は楽しそう。
……けど、だからって彼が私を懐に入れてくれたとかそういうんじゃないのは一目瞭然だった。
だって、彼が態度をコロリと変えたのは、私の口から『九条』の名前が出てから。
つまり、このフレンドリーさは私が持つ『九条』というカードが何かしら彼にとって都合がいいからであって、私自身への好意や優しさが芽生えたわけでは絶対にないのだ。
……まあ、別にこの人からの好意云々はどうでもいい。
嫌なのは、今後彼の思い通りに利用され、手のひらで転がされることだ。
私は絶対に、普通の女の子たちと同じようにコロッと騙されない。今後一切彼から何を言われても冷たく突っぱね続けよう。
そう決意した私は、ベッドの上でぐしゃっとなっている布団を整え、仕切り直すように横になろうとする。
「千歳ちゃーん、寝んのー?」
背後から声をかけられるが、シカトして布団に埋まる。
