もういいや、寝よう。
寝てしまえば明日の朝だ。
そう考えた私は篤彦に背中を向けるようにしてベッドに潜り込み、ぎゅっと目を閉じる。
日中の練習の疲れと今しがたの精神の疲弊が相まって、今すぐにでも寝れそうだ。あと三秒放っておいてくれたら確実に寝れる。
一、二、三……
「そういやお前さ」
ほんと何?
今にも意識が沈みそうな絶妙なタイミングで妨害され、私は枕を投げつけかけた。
寝たふりをしてやり過ごそうかとも思ったけれど、無視してさらに機嫌を損ねられるのも面倒くさい。私は渋々、ぼそっと答えた。
「なんですか」
「ファイナル前の休み期間、なんかあったやろ」
「……」
なぜ今になってそんな前のことを聞いてくる?
なんだか嫌な予感がした私は、どうにか誤魔化そうと、雑に、冗談半分に聞こえるようなトーンで返した。
「さあ。京といちゃついてただけですよ」
「ふーん。九条の坊っちゃんともいちゃついてたって風の噂で聞いたんやけど」
「?!」
危うくむせそうになった。
な……なんで知ってんの、この人。
背中に滲む冷や汗、速くなる鼓動。私は布団からそっと顔だけ出して、篤彦に視線を向けた。
「……どこから聞いたんですか」
我ながら、警戒心100%みたいな声。
けれどそんな私の反応を前にしても、篤彦はいつもの淡々とした態度を崩さず、視線すら寄越さずにさらりと肩をすくめる。
「ダンサーコネクションなめんな。東怜になんかいくらでも友達おるわ」
「……」
一体どこまで知られてる?
