そんな息の詰まる空気の中、篤彦は壁際に歩み寄り、ガラガラ、と部屋の窓を閉める。
そうすることで、先ほどまで入ってきた夜風や虫の音、街の喧騒がふっと遮断され、部屋に静寂が落ちてしまった。
……気まずい。
ただでさえ気まずかったのに、こうして静まり返ってしまうと、いよいよ変な汗が滲むレベルで居心地が悪くなってきた。
とはいえ、男装を解いたこの状態で部屋を出るわけにもいかないし……
結局、私は逃げるようにスマホに視線を落とした。
とりあえずさっきの遥風への返信の続きでも打って、この息苦しい空間から意識を逸らそう。
そう思った、まさにその時だった。
「千歳ちゃんって、性格悪いよな」
ぴくり。
唐突に静寂を破った低い声に、身体が硬直した。
……え。
何、急に。
「どういうところが?」
努めて平静を装い聞き返すと、篤彦はようやくふっとこちらを見た。
冷たい視線。
いつもみたいな茶化しの温度はなく、眼鏡の奥の瞳は何を考えているのかまるで読めない。その威圧感に、少しだけ気圧されてしまう。
「……ま、自覚してへんならええわ」
それだけ吐き捨てると、篤彦はあっさり興味を失ったようにスマホに視線を落とした。
……
……な、なんか。
今日いつにも増して機嫌が悪いな、この人?
何か私に言いたいことがあるのなら、はっきり言ってほしいんだけど。
……問い詰めてみる?
いや、今の篤彦相手じゃ、まともに答えてくれる気がしない。
むしろ何かを喋った瞬間に言葉のナイフで滅多刺しにされる未来が見えて、結局私はそっと視線を逸らした。
