それから数日が経った。
噂を聞く限り、今のところフライヤーチャレンジに失敗したメンバーは居ないらしい。
さすがファイナリスト、文化も言語も何もかも違う異国の地でも遺憾無くそのスター性を発揮できているんだな……なんて、素直に感心する私もいたけれど。
一方で、他人の成功談を聞くたびに胃がズーンと重くなっていくのは誤魔化せなかった。
だって、みんなが順調にクリアしているということはつまり、失敗したときの悪目立ち具合も、そのぶん跳ね上がるということで──加えて、私の出番は、早くも明後日まで迫っていたからだ。
どうしよう……練習を頑張っているとはいえ、私のダンスはまだ見ず知らずの現地の方々を惹きつけるレベルには到底達していない。
遥風にダンスを教えてもらうのもあの日を最後に切り上げてしまったし──
こうなったら、自力でどうにかするしかないよね。
「はぁー……」
特大のため息を吐きながら、ぽす、とベッドに身を投げる。
今はレッスンが終わり帰ってきて、シャワーを浴び、ようやく男装を解いたところだ。
いつもなら心休まる時間のはずなのに、本番が近づくとこんな時でものんびりリラックスできない。
私はベッドの上でゴロンと寝返りを打つと、仰向けになって天井に目を向けた。
少しでも頭を空っぽにしようと、今聞こえるもの、感じるものに意識を向けてみる。
ジー、と音を立てる蛍光灯。ドアの向こうを誰かが歩いていく音。コモンルームで何やら盛り上がっている声。
開け放たれた窓からは、虫の声や車が通る音、そして涼しい夜風が入ってくる。
ブラジルに来たときに比べたら、だいぶ暑さも緩んできた気がする……ずっとこの気温でいいのに。
そんなふうに思いながら、小さく息を吐いて、目を閉じかけた──そのとき。
ヴーッ。
枕元に置いていたスマホが、小さく震えた。
