「……全部終わった?」
重苦しい沈黙をなんとかしようと、ちら、と彼に視線を向けて聞く。
「うん」
「そっか、」
それだけで、また途切れる会話。
コモンルームの中は静かだった。冷蔵庫の低い駆動音、扇風機の回る音。
窓から差し込む陽射し、ソファの方からは翔と篤彦の気配。
さっきまで何も考えずに喋れていたはずなのに、今はどうしても言葉が見つからない。
──私は数秒ほど、逡巡した。
多少は傷つけるかもしれない。けれど、今もなお、私の存在が彼にとって『毒』になり得るんだとしたら──
どうしても、ここで一線を引いた方がいい気がしてしまった。
「ねえ、遥風」
ちら、とこちらを見る遥風。
私は変に冷えた手をギュッと握りながら、真っ直ぐに彼を見る。
「もうだいぶ教わったし、今日からダンスは一人で練習するよ」
瞬間──
遥風の瞳に、ふっと辛そうな光が滲んだ。
胸がぎゅう、と絞られるみたいに痛くなる。
……けれど、ここで引いたら意味がない。
今みたいな偶然の接触でここまで空気が変わってしまうんだったら、まだ距離は必要だ。
拒絶してるわけじゃないよ。
そんな想いを込めて、私はニコッと柔らかく笑って見せる。
