さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



翌日。

今日のMr.Dのレッスンは午後から入っているため、午前中はフリーとなっている。


いつもならそれでも朝からスタジオに籠ってダンスの練習をしていたところだけど、今日はちょうど買い貯めていた消耗品が底を突きかけていたため、一人で少し離れたスーパーに買い出しに出ていた。


荷物持ちに誰か呼べたら良かったんだけど、声をかけたかった雪斗や栄輔はメイド服回避に必死になっているようで、邪魔はできなくて。

結局、両手にずっしりと重いエコバッグを下げ、暑い中ぜぇぜぇ息を切らしながら寮に戻ってきた私。


レッスン前にこんなに買ったのは失敗だったな……でも一回にできるだけ買い貯めておきたかったし仕方ないか……。


と、そんなふうに色々と思考を巡らせながら、寮の鍵を開けて中に入ると──

コモンルームには、先客がいるようだった。


部屋の奥の黒いソファに並んで腰掛けるのは、翔と篤彦。

二人は何やら話しながら、それぞれ手元のスマホをいじっている。


……気まず。

私の天敵ペアと言っても過言ではない組み合わせに、内心ちょっと眉根を寄せる。


彼らの注意が私に向かないうちに、さっさとやることを済ませて部屋に戻ろう。

そう決めた私は、足早にキッチンカウンターに向かった。ビニール袋から飲み物や野菜なんかのパックを取り出し、急いで冷蔵庫の中に移していく。


──と、そんなことをしていたときだった。


ガチャッ。

コモンルームの扉が開く音がした。


反射的に顔を上げると、入ってきたのは──遥風。


自主練にでも向かうところだったのか、いつもの黒系のTシャツにスウェットパンツ、アクセサリーをジャラジャラ付けた撮影モード。


無造作に分けた前髪の下から、彼の瞳がこちらを捉え、バチッ、と目が合う。


そして、その顔を見た瞬間──

ほとんど条件反射で、魔が差した。