「いや、何?別にいいよ」
「は?」
ちょっと表情を引き攣らせる遥風。私はくすくすと笑ってしまいながら、軽い調子で続けた。
「わかるよ、死んでもメイド服回避したかったんだもんね。仕方ないそれは」
「……は。バカにすんな」
プライドを刺激されたのか、ふいと顔を背ける遥風。
けれど耳のあたりがちょっと赤くて、恥ずかしがっているのがすぐに分かってしまう。
気づいたら余計に面白くなって、私は口元を押さえながら、彼の手元のスマホに視線を向けた。
「それで?読んだの?DM」
「いや読まねーよ。ブラジル語読めねぇし」
「ポルトガル語。翻訳使えばいいじゃん。せっかく送ってくれたんだから読もうよ」
「はぁ?なんで……」
本気で嫌そうな顔をしつつも、私の言葉に断れなかったのか。
遥風は、渋々といった感じで一番上にあったDMを翻訳アプリにコピペした。
くるくるとローディングする画面が数秒続き──
やがて、表示された言葉は。
『ヘイ、セクシー・マシーン』
「「ぶっ」」
一行目を見た瞬間、二人揃って吹き出した。
なんて……?
早くもノックアウトされかける私たちをよそに、翻訳アプリは無慈悲にもパッション溢れる怪文書を日本語で紡ぎ出してゆく。
『あなたのその冷たい瞳に撃たれて、私は今、床で死んでいます』
「嘘つけ」
『あなたに私のすべての財産と、お母さんが作ったフェジョアーダを捧げます』
「何それ」
「いらね」
てか自分で作れよ、とド正論のツッコミを吐き捨てる遥風がツボに入り、私は一人肩を震わせて笑いを噛み殺す。
きっと翻訳がポンコツなだけで、元はど真面目な口説き文なのだろうから、笑うのは失礼だよね。
そう思って、なんとか堪えていた私だったのだけど──
