「Every dance break needs a real dancer, and you all know it. So the first pick is Atsuhiko! No objections, right?!(ダンスブレイクには最高のダンサーが必要だ。お前らも分かってるよな。だから一人目は篤彦だ!異論はないな?!)」
はい。ないです。
というか知ってた。
むしろさっきまでの流れで、篤彦以外を一人目に選んできたらその方がびっくりだ。
と、そんな緩み切った空気の中──
篤彦本人だけは、ほっと安堵したようにため息を吐いていた。
不安で仕方なかったけど、どうにか報われて良かった!と言わんばかりの態度。
まあ無論それも彼の演技なわけだけど、スタッフさんたちにとってその真偽は二の次。とりあえず美味しい絵だからと、フォーカスは迷わず篤彦の横顔に寄った。
あまりにもこの男の思惑通りすぎて腹が立つけれど……仕方ない。今回は、完全に椎木篤彦の作戦勝ちだ。
ファイナルの尺の大部分は、きっと彼が持っていく──つまり、高確率で悪編を回避してくるだろう。
この篤彦は悪役として消費するより、覚醒枠として消費した方が番組にとって明らかに得だから。
そして、悪編回避ということはすなわち、これから彼には怖いものが何もなくなるということで。
その状態で、彼が次に何をするか?
……考えるまでもない。
榛名千歳という不安因子を蹴落とすために、全力を注いでくるに決まってる。
もうやだ……振り出しに戻った……
早くもお先真っ暗を確信、ため息を吐く私。
けれどそんな私を取り残して、Mr.Dの話は進んでゆく。
