……と、完全に詰みを確信していた私だったけれど。
蓋を開けてみれば、その後続いたメンバーのコレオ披露で場がしらけることは一切なかった。
理由は明白。
篤彦のパフォーマンスで、Mr.Dの機嫌があり得ないくらい良くなってしまったからである。
昨日までの、一挙手一投足にブチギレてきた地獄のレッスンは一体何だったのか。
同じ講師とは到底思えないほど、レッスンの空気は180度変わっていた。
「Come on, give me more!(さぁ、もっと来い!)」
「Don’t be shy! Hit that!(遠慮すんな!そこカマせ!)」
「YEAH, THAT’S IT!(そう、それだ!)」
……うるっさい。
いや、盛り上げてくれるのはありがたい。
ありがたいんだけど、一旦その声量をどうにかしてもらえますか。
と、そんな私の内心の愚痴など届くわけもなく。
ブレーキの壊れた車、ことMr.Dは止まることを知らず、スタッフさんにスタジオ照明までいじらせ始める始末。
「Backlight blue! No, darker! Yeah! Bring in red from the side!(バックライト青!いや、もっと暗く!そうだ!サイドから赤入れて!!)」
クラブさながらの紫がかったカッコいいライティングに変更し、完全に調子に乗っている。
と、そんなテンションの中で、私を含めた他のメンバーもさしずめ甘々の好評価をもらうことができ、恐怖のコレオ評価──もとい、Mr.Dのダンスパーティーは明るい空気で終了したのだった。
