さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


音は変わる。媒体で、環境で、簡単に。

そういうときに、彼らにとって、動きをアジャストできる範囲が広いほど良い。


つまり──

彼らの場合、即興というフィールドは、彼ら自身を表現するのに最高の『チョイス』になり得るのだ。


その話を聞いた時、そこまでレベルの違うダンサーにお目にかかる機会なんて、きっとないだろうと思った。

というか、そんなことって本当にある?と疑ってすらいたくらい。


けど。

鏡越し、篤彦と視線が合う。


瞬間、その目が、ふ、と揶揄うように細まった。


『ちゃんと見とき』


そう言われているみたいで。


あ。

この人、まさか──


『Hit it』


小休止。

そして、次の拍。


サウンドが、爆ぜた。


クラシックなスウィング調から一転、音数が一気に増えたローヒップホップへ。

整然とした音粒たちが、事故でも起こしたみたいに荒ぶる。


あちこちに弾け飛ぶ音たち、軋む音、重低音。


その中心で──

彼は完全に、音を『解って』いた。