『But I ain’t handing you the choreo. Build it yourselves.(だが、コレオは渡さない。お前らが作れ)』
意味の分からないことを言い出した。
ついにコイツ狂ったか?とざわつき始めたスタジオ。
けれどその後、よくよく彼の説明を聞いてみると、『ダンスブレイク選抜の材料として、それぞれがトラックの音をどう解釈するのか見たい』ってことらしかった。
……まあ、理屈が分からないでもない。
けど、果たしてそんなことをやっている余裕はあるのか?
帰国への時間は限られているのだから、一刻も早くダンブレを入れて、振りを固めていくべきフェーズだろうに。
加えて、一度自分でコレオを付けてしまったら、あとから別の振りを入れ直した時に混乱するっていうデメリットもあるし。
正直、あんまりいいアイデアとは思えなかったけれど──
相手は世界のレジェンド・Mr.D様。当然、私たちのようなペーペーが逆らえるはずもなく、結局、私たちはそれぞれコレオ制作のためスタジオにカンヅメになることとなった。
ダンブレ選抜を狙っていない私でさえ、公開処刑回避のため睡眠を三時間まで削るくらい必死になっていたし、いつもは自主練に顔を出さない翔まで集まるレベルで、みんなきっちり準備していた。
と、そんな中で──
椎木篤彦。
この男だけは、一度も準備に現れることはなかった。
