さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



元から、執着されていることは分かっていた。


けれど、やっぱり、あの夜から。

彼が私のことをちゃんと女として見ているのだと、嫌でも意識するようになってしまった。


遥風のときは、意識が朦朧としていたから、まだ良かった。

けれど今回の場合はそうではないから、気まずさが段違い。


それに京の方も、あの日を境に私に向ける視線の湿度が増した気がするし……

スキンシップは無いけれど、呼吸するみたいに甘い言葉を囁いてくるし。


一度意識してしまうと、もうダメだった。


途端に指先まで緊張が走って、自然に接するの『自然』が分からなくなる。

どきどきと心臓の音だけがやけに大きく響いて、熱い。


明らかにぎこちない動きのまま、私は視線を泳がせ、その場の荷物を雑にまとめ始めた。


「じゃ、あ、そろそろ、帰る……?」


変なところで言葉が途切れた。

我ながら、ひどく焦っている。

不意に京と目が合ってしまい、パッと反射的に逸らしてしまう。京が放つ甘ったるい雰囲気に、当てられている自覚があった。


京もそんな私の動揺を全て察しているだろうに、意外にも変に茶化してくることはなくて。

ただ、私の横顔を見つめたまま、ふっと口元を緩める。


「汗だけ拭いてこっか。冷えたら困るし」


言いながら、私の傍に置いてあった汗拭きタオルを手に取る京。


てっきりこちらに渡してくれるのだと思って手を差し出した──

のに、何故だかそれがこちらに渡ってくることはなくて。