「……さて」
沈黙を破ったのは、京だった。
私の横で壁際に背を預けながら、ゆるりとこちらに視線を向け──
「脱ぐ?」
「いやなんで」
微塵も反省せず初っ端セクハラをかましてくる京に、間髪をいれずツッコむ。
この人、さっきから深夜テンションがすぎる……!!
警戒心を込めて睨むけど、京は動じる様子もなく、くすくすと楽しそうに喉を鳴らして笑うだけ。
「Strip first. Talk after.(脱げ。話はそれからだ)」
「……最悪なMr.Dやめてよ」
京のモノマネに突っ込むと、「あ、伝わった」とさらに楽しそうに爆笑する京。
いつもの彼のからかい混じりの冗談に、私はちょっとため息を吐いた。
「あとでセクハラ警察に密告するよ……?」
私が思わずじとっとした視線を向ける。
けれど京は、そんな私の反応すら愛おしいとでもいうように目を細めた。
「ごめんね。千歳のそういう顔可愛いからつい」
「……全部可愛いって言う」
「今更?」
その、短く返された言葉に。
言葉以上の何かが含まれている感じがして、私は一瞬だけ息を止めた。
──俺らもう、色々あったじゃん、みたいな。
ふと、あの夜の出来事が、最悪の鮮明さで脳裏に蘇ってくる。
今更。
本当に今更だ。
一度思い出してしまったら最後、彼と二人きりのスタジオの居心地が耐え難いほどに悪くなってくる。
