さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「おら早く寄越せ500円」

「なんで?触ってないじゃん」

「あの僕ぅ、セクハラ警察なんでぇ、触ってなくてもセクハラ認定したらいただいてるんですね罰金」

「本当に警察で合ってる?その黒さじゃ相場犯人じゃ」


京の言葉に隣の雪斗が吹き出し、陽斗がムキーと逆上してそちらに襲いかかる。

でも、そう言われてしまうのも仕方ないくらい、陽斗は黒かった。

日に焼けたとかではなくて、文字通り全身漆黒なのだ。日焼け対策グッズで。

ちなみに陽斗はカメラが回っていない時、いつもこの某探偵アニメの犯人ルックである。

夜くらい取ればいいのに、っていうかむしろ取って欲しい。夜中に寮でこの黒ずくめに遭遇したら普通にホラーでいい迷惑なのだ。


「もう太陽出てないしやらなくていいんじゃない?それ」

「は?!これはUV対策だけじゃなくてブルーライトや照明ダメージ対策にもなるの!!光老化防止!!」

「そ、そう」


黒ずくめのまま半ギレしてくる陽斗に、思わずちょっと仰け反る。それは大変失礼いたしました。

この人に美容のことで変にツッコむのはやめよう……と、ひとり反省していたその時。


「あっ」


犯人は不意に何かを思い出したようで、私から視線を逸らした。ようやく圧から解放される。


「……何?」

「ヤバいこのフェイスガードの案件編集忘れてた!!もうすぐ締め切りなのに」

「え、ブラジルに来てもYouTubeやってんの……?」


私が思わず呆れてこぼすと、雪斗が『ヤバいよな?このワーカホリック』とでも言いたげにこちらに視線で訴えかけてきた。こくこくと頷く。

篤彦といい陽斗といい、エネルギッシュすぎるんだよな……私なんか、毎日寝て食べてダンスしての繰り返しで限界までへとへとなのに。