さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



ただ翔と篤彦は、夜練に一度も顔を出していない。

完璧超人の翔先輩はともかく、篤彦は今のところMr.Dに毎回ブチギレられているにも関わらず来ていないので、他の男子たちから裏で苦言を呈されている。

私は彼の思惑を全員にバラしてやろうかとも思ったけれど、そんなことをしたら彼からの報復が恐ろしいので、なんとか飲み込んでいるところだ。


と、そんな流れで私は今日も、深夜の居残り練習に来ている。

ちなみに今いるメンバーは双子と京、そして私だ。


スタジオの四隅では、最近翔が現地で調達してきた扇風機が、ぶおおと音を立てて回っていて。

大きく開け放たれた窓の外からは、夜風、クラクション、虫の声なんかが混ざり合って流れ込んできている。


そんな夜の空気の中で、既に何度か通しを終えた私たちは、そろそろお開きかというムードに包まれていた。

くたくたの身体を、トサッと窓際の壁に預ける。


初日に比べたらかなり涼しくなったとはいえ、先ほどまでのハードな練習のせいで、全身はまだじっとり汗ばんでいた。


あっつい……。

首元をぱたぱたと扇ぎながら水を飲んで、なんとか熱を逃がそうとしていると。


不意に、隣から声がかかった。


「顔赤」


顔を向けると、声の主は京で。

気だるげに胡座をかき、ちょっと首を傾げてこちらを覗き込んでいた。


乱れた前髪の隙間から、揶揄うように目を細めている彼。

私はちょっと唇を尖らせ、彼からふいと目を逸らす。