さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



そんな問題のレッスン初日から、早くも数日が過ぎたわけだけど。


──椎木篤彦という男は、相変わらず何をやっているのか分からない。


夜遅くにふらりと帰ってきたかと思えば、ブルーライトカットらしい眼鏡をかけて、熱心にパソコンのキーボードをカタカタ打っている。

画面に映る複雑なチャートを睨み、顎に手を当てながら難しい顔で考え込んでいる姿を見るに──

やっぱり、株っぽい。


それも、決して日本市場だけじゃない。

時差のある世界の市場の動きまでリアルタイムで追っているみたいだった。


……って、いや、なんでよ。

なぜアイドルオーディションで、深夜のブラジルで、世界市場……?


全ての要素が理解不能すぎて怖い。

ここまでくると、他の男と同じようにグイグイ迫ってきてくれた方がまだマシだったかもとすら思えてくる。いや嘘、そんなことはないけど。


それでもやはり、同じ部屋でそんな謎作業を毎晩続けられると、さすがにこちらとしても非常に居心地が悪く──

結果。

私は椎木篤彦と二人きりになる時間を避けるように、頻繁に夜遅くまでスタジオに残って練習するようになっていた。

Mr.Dのブチギレレッスンへの対策もできるし、一石二鳥というものである。


すると、そんな私に触発されたのか、あるいは単にMr.Dによる公開処刑を恐れたのか、一人、また一人と夜練に残るメンバーが増えていき──

今や深夜でも三、四人ほどがスタジオに残っている光景が普通となっていた。