「期待値高かった奴が一回ボロクソ落とされる。で、夜も帰らず必死に練習を積み重ね、その結果──見違えるように覚醒!ほら、どう考えても美味いやん」
なぁ?と、私の顔を覗き込んでくる篤彦。
何も言い返せなかった。その通りだ。
彼の狙い通り、Mr.Dブチギレシーンのスタッフ陣はまるでお宝を見つけた子供のように目をキラキラさせていた。
あの雰囲気を見るに、今回のファイナルでフォーカスが当たるのは彼で確定。
私にダンスを教えるシーンまで放映されたら、彼が詰められた時の沈黙は、後輩を庇う最高の先輩ムーブと化す。
こんなによくできた王道感動展開から、悪編なんかできるわけがない。
……それは、つまり。
「このまま順調にいけば悪編回避!心置きなくお前を蹴落とせまーす」
イェーイ!と満面の笑みでピースする篤彦。
さすがに苦虫を噛み潰したような顔になってしまった。
あの、怖い。
本当に怖いです。
でも、それを踏まえて考えてみると、今までの彼の行動って、ファイナルでのフォーカスをゲットするためにずっと計算されていたような気がする。
例えば前回の順位。篤彦が7位って正直低い気がしたんだけど……
それもきっと、ファイナルでの這い上がりを劇的に見せるためにわざと沈んだのだろう。
四次のダンブレセンターも敢えて飛龍に譲ってたし……
きっと、無条件通過が確定している四次までは敢えて本気を出さずに、デビューが決まるファイナルで全てを掻っ攫おうという魂胆だったのだ。
こんな曲者、オーディション番組に入れちゃダメでしょ……!!!!
今更ながら、彼のあまりの強かさに慄き、何も言えなくなる私。
