そう気づいた瞬間、決して寒くなんかないのに、全身が粟立った。
私には違いが分からない程度に手を抜いたダンスも、Mr.Dの叱責も、緊張したような面持ちも、掠れた謝罪も──
全部、予定していたことだったって?
ドン引きする私をよそに、篤彦は心底機嫌が良さそうに目を細めて。
「ブチギレいかつかったよなぁほんま」
「……」
「Don’t insult me!!」
「やめて」
調子に乗って物真似までし始めたので顔をしかめると、彼はついに肩を揺らして爆笑し始めた。
コイツマジで……。
呆れてため息すら出ない私。
そんな私の反応など意に介さずといった様子で彼はひとしきり笑い終えると、不意に思い出したようにこちらに視線を向けた。
「……あぁ。そういや、今回のはあんたのダンス参考にしてん。ほんまにありがとうな」
「は?」
一瞬その言葉の意味が分からなかったけど、ちょっと考えたらすぐに理解した。
つまりこの人、振り入れタイム中、私にダンスを教えるふりをして──
逆に私の動きから、『いい感じにヘタクソなダンス』を学んでいた、って言ってるんだ。
私が死に物狂いでマスターした全力ダンスを手抜き演技のサンプルにするなんて、性格が終わってる。
「……どうして、わざわざ下手な真似なんて……」
苛立ちを抑え込んでなんとかそれだけ問うと、篤彦は街灯に透ける前髪をかき上げながら、さらりと言った。
「尺奪うため」
「尺」
「そ。挫折→努力→成功。これがオーディション番組が一番欲しがるテンプレやろ」
眉をひそめる私。
篤彦は人差し指を立て、歌うように続ける。
